誰もホントのことを教えてくれない!? きものを保管するには◯◯◯◯がいい理由
暑い日が終わり、朝晩は爽やかな空気を感じる頃になりました。
今年の夏は、気温が高くて暑いというより
湿度が高くて蒸し暑いという感じでしたね。
このような暑さは不快感が強い・・
実はその感覚、人間だけでなく、
なんと‼︎ きものや帯も同じなのです。
和ダンスにきものが入っているから安心という方でも
もし、
今年の梅雨明け以降一度もタンスを開けてないとすれば
・・・
きものや帯はカビの襲撃にあっているかもしれません。
ということで、
大切なきものや帯を守るために いま私たちができることは???
きもの保管方法のコツをお伝えいたします。
きものに多用される素材「絹」
きものはどんな素材で作られているかというと
絹・麻・綿
などの天然繊維がほとんどです。
いま、
お着物をお持ちの方でお嫁入り仕度でご両親に買ってもらったという方の
きものや帯はほとんどが絹100%で織られているもの
絹100% イコール “正絹”(しょうけん)です。
絹は衣料品の素材としては最高級品。
パリコレに名を連ねるグラン・メゾンも
オートクチュール(高級誂え婦人服)で絹=シルクを多用しています。
衣料品の素材として“絹”が素晴らしいのは
光沢や色彩の美しさはもちろん、
着ているときに快適だということがあります。
なぜ、私たちが絹製品を着て快適だと思うか???
その理由は、
絹は 保温性、保湿性、放出性に優れており
着る人の体温や湿度をちょうどいい塩梅に
調整することができるから。
もちろん個人差はありますが・・・
そう考えると
絹って、実は“生きている”んです!
生きて着る人に寄り添ってくれているのですね。
絹にとって快適なコンディションとは?
“生きている”絹にとって、
快適なコンディションは環境が整えば絹自身が選びます。
保管で大切なのは
きものとして着ても着なくても
絹自身が快適なコンディションを選べるように
してあげることです。
まずとりかかることは
タンスから出し風に当ててあげて呼吸をさせること
具体的には
“きものとして着る“こと。
あとは
“虫干し”です。
言葉として聞いたこともあると思いますが、
虫干しとは乾燥した季節を選んで、
カラッと晴れた日にきものハンガーかけ
風の通るところに影干しすることです。
こうすることで、
絹自身が自分にとって必要な空気や湿度を吸って出す
を繰り返します。
一方で、絹にとって一番辛い環境とは???
それは、空気も湿度も全くなかったり、
もしくは湿気がありすぎるような状況です。
日々、お客さまを拝見していて多いのは
婚礼ダンスが“開かずの扉”になり
きものがしまいっぱなしになっている・・・
という状況。実によくあります(笑)
一見、タンスにしまってあるからよさそうですが
実は
温暖化、亜熱帯化しているいまの日本の環境や
密閉性の高い住環境から考えれば
扉が開かない婚礼タンスほどきものにとって
今ほど受難の時代はありません。
コレ、実はとてもかわいそうなのです。
なぜなら
湿度の調整が全くできない婚礼ダンス
しかも
これ以上、入らないぐらいパンパンに詰まった引き出し。
何年、何十年と引き出しを開けることがなければ、
酸素を吸って呼吸!もへったくれもなく
タンス中にあふれかえった湿気によって
ほとんどのきものや帯にカビが発生してしまっています。
大変残念なことですが、
私の元に持ち込まれるきものお手入れSOSの中で一番件数が多いのは
“カビのトラブル”です。
きものの保管にもっとも適した“うつわ”とは?
タンスの中に入れておくだけではきものは保管
できないものでしょうか?
毎シーズンごとに虫干し・・・なんて
仕事・子育て・家事などで忙しい女性には
実際無理なハナシ・・・ですよね。
そこで、
ある程度 ほかっておいても安全に
正絹(絹100%で織られたもの)のきものや帯などを
保管する“うつわ”として、
桐タンスがあればベストです!
桐は、絹製品を保管するにはもっとも適した素材です。
なぜなら
絹が自分で呼吸ができるように
桐も自分で湿度や空気の量を調整することができるからです。
今年の夏のように湿度が過多の場合、
桐が自然に必要な湿度を吸い空気を通します。
その中のきものも自分に必要な湿度を取り入れ、
必要な空気を吸い込み呼吸します。
寒くなれば夏に吸った湿気を外に逃し、タンス内での結露を防ぎます。
必要な空気・湿気を吸い込み、
余った湿気や空気はタンスの外へは吐き出す・・
この繰り返しで 機械のチカラを借りずとも、
自然のチカラで除湿できるのです。
昔は
『女の子が生まれたら庭に桐の木を植えよ!』
→将来、タンスを作るため!
言われるぐらい、
きものと桐のタンスは切っても切れない関係です。
ただし、
いくら自助作用があるからとはいえそのまま何年も開かずの扉では可哀想です。
せめて、
春に一回、秋に一回、ひき出しを開けるだけでも
いいのです。
新しい空気を一気に入れ換えてあげれば
ほとんどのカビのトラブルは防げるはずです。
そして、
きものには桐のタンスがいいと言われる
もうひとつの特徴を取り上げておきます。
それは、“桐ダンスは火事に強い”ということ。
桐の木は
水がかかると膨張し硬くなり、
引き出しと引き出しの間に
水が入る隙間さえなくなる・・・と言います。
また
水が掛かった桐はとても燃えにくく、
表面は燃えても中身のきものを守ってくれる
と言われています。
2011年 東日本大震災でも津波被害にあった桐ダンスが
沖でプカプカと浮いており中身のきものが無事だったという話があります。
これは埼玉県で100%桐製の草加ダンスを製造している親方が
教えてくれました。
“桐ダンス”でも注意するポイント!
『私はきものを桐のタンスで保管しているから大丈夫!』
と思われた方でも、ひとつ気をつけて欲しいことがあります。
それは、
昭和30年代後半以降の高度成長期やベビーブーム期の頃の結婚を機会に
“婚礼セット”で衣装タンスを購入した場合の多くは、
素材が桐100%ではないことがほとんど・・・
という事実です。
当時は どれも高さが180センチほどあり三竿でひとつのセットでした。
①きもの用の観音開きのタンス
②コートや背広、ブラックフォーマルなどの礼装用衣装をしまうタンス
③セーターや軽衣料を収納する引き出しのタンス
これら全てを総桐で作るとなると
タンスだけでも数百万円!これは現実的な金額ではありませんね。
そこで一般的に売られていたのは
裏板や間仕切りの板に“ベニヤ板”を使うというコストカットされたタンス。
ひどい場合、全てべニヤ素材でできていて、
表面だけ桐が貼ってある場合もあります。
桐100%でないと空気や湿気の出し入れは
不可能です。
一度ご自身のタンスの素材を確認されることをオススメいたします!
ただ、この総桐のタンス、
いまの時代、実際に購入を考えて一度見てみたい!と思っても
家具屋さんで在庫として扱っているお店はほとんどないと聞きます。
老舗の家具選門店や呉服屋さんへの問い合わせが
一番の近道かもしれません。
いかがでしたか?
きものの素材・絹の特徴と
絹の保管に適した総桐のタンスさえあれば保管で頭を悩ます必要がないことが
おわかりいただけたかと思います。
お手入れや保管方法のことわけが理解できれば
きものを着るのも扱うのも不安がなくなりますね。
これからもお悩みや不安解消の記事をどんどんアップしていきますね。
お楽しみに!!!